タイの日系工場で「属人化」を解消する業務自動化の始め方

業務別自動化

「あのExcel、○○さんしか分からない」「○○さんが休んだら誰もレポートを出せない」——こんな状況に心当たりはありませんか?

タイの日系工場では、バックオフィス業務の属人化が起きやすい構造があります。駐在員は数年で交代し、タイ人スタッフも入れ替わる。日本語とタイ語の壁もある。こうした要因が重なることで、「あの人がいないと業務が回らない」という状態が慢性化しているケースは少なくありません。

この記事では、タイの日系工場で属人化が起きる原因を整理したうえで、「マニュアル化」ではなく「業務自動化」で属人化を解消するアプローチを紹介します。

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この記事でわかること

  • タイの日系工場で属人化が起きやすい3つの構造的な理由
  • 「マニュアルを作ればいい」では解決しにくい現場の事情
  • 業務自動化で属人化を解消する具体的なアプローチと業務例
  • 実際に自動化を導入した現場の声と、始め方の3ステップ

タイの日系工場で「属人化」が止まらない3つの理由

属人化は日本国内の製造業でも課題として語られるテーマです。しかし、タイの日系工場には属人化が加速しやすい構造的な要因が存在します。日本にいた頃よりも属人化がひどい——そう感じたことがある方もいるのではないでしょうか。

理由①:駐在員が3〜5年で交代する

日本本社からの駐在員は、多くの場合3〜5年で帰任します。赴任してすぐは前任者の引き継ぎメモを頼りに業務を覚え、半年ほどかけてようやく自分なりのやり方が固まってくる。しかし気づけば後任への引き継ぎ準備が始まり、またリセット——そんなサイクルに覚えはないでしょうか。

問題は、引き継ぎの中身です。製造現場のオペレーションは工場長やタイ人マネージャーに蓄積されていくことが多いですが、バックオフィス業務はそうはいきません。「本社への月次レポートはこのExcelのこのシートをコピーして、この列だけ手動で修正して……」といった暗黙の手順は、口頭で伝えるしかない、というケースも多いのではないでしょうか。

結果として、駐在員が交代するたびに「前任者がやっていたことがよく分からない」という空白期間が生まれます。そしてまた、新しい駐在員が自分なりのやり方を編み出し、それが次の属人化の種になっていくわけです。

理由②:タイ人スタッフの入れ替わりが多い

タイでは転職が一般的です。特にバックオフィス系のスタッフは、給与や待遇の改善を求めて数年単位で職場を変えることも珍しくありません。

日次レポートの集計方法、在庫管理用Excelの関数の意味、仕入先へのメールの書き方——こうした業務を担っていたスタッフが退職すると、引き継ぎが不十分なまま次の担当者に渡ることがあります。新しいスタッフが「このExcelのB列とD列、なぜ色が違うんですか?」と聞いても、誰も答えられない。そんな状況が起きがちです。

さらに厄介なのは、前任のスタッフが独自に作った計算式やマクロが入ったExcelファイルです。作った本人はすでに退職しており、中身を理解している人が社内に誰もいない。触ると壊れそうだから放置する——結果として、その「誰も中身を理解していないExcel」が業務の中心に居座り続けることになります。

理由③:日本語とタイ語の壁

業務手順を共有しようにも、日本人駐在員とタイ人スタッフの間には言語の壁があります。

日本語でマニュアルを作っても、実際に作業するタイ人スタッフが読めなければ意味がありません。かといって、タイ語で業務フローを書いてもらうと、今度は駐在員が中身を確認できない。バイリンガルのスタッフがいれば橋渡し役になれますが、その人が退職したらどうなるか——また振り出しに戻ります。

結局、「言葉で伝えきれないから、できる人にやってもらう」という構造が固定化し、属人化が進んでいくことになります。

属人化している状態

・「○○さんに聞かないと分からない」が口癖になっている
・担当者が休むとレポートが出せない・メールが送れない
・引き継ぎのたびに同じミスが繰り返される
・Excelファイルの中身を理解しているのが1人だけ
・前任者の作ったマクロが壊れても直せない

属人化を解消した状態

・誰が担当しても同じ結果が出る
・担当者が休んでも業務が自動で回る
・引き継ぎの負担が大幅に減る
・データの集計・転記が仕組みとして動いている
・駐在員が交代しても業務フローが途切れない

「マニュアルを作ればいい」では解決しにくい理由

属人化の対策として最初に挙がるのが「マニュアル整備」です。もちろん、マニュアルがあるに越したことはありません。しかし、タイの日系中小工場の現場では、マニュアルだけでは解決しにくい事情がいくつかあります。

そもそも作る余裕がない。日本人駐在員が2〜3名、タイ人スタッフも10名前後という規模の工場では、全員が目の前の業務をこなすだけで手一杯ではないでしょうか。「マニュアルを整備しよう」と思っても、日々の業務に追われて後回しになり、結局作れないまま年月が過ぎていく。そんなケースは少なくないはずです。

作っても更新が追いつかない。業務フローは日々少しずつ変わります。本社のレポート様式が変更になった、取引先のメールアドレスが変わった、新しいスタッフが入った——変更が起きるたびにマニュアルを直す必要がありますが、更新作業自体が属人化しがちです。「マニュアルを管理している人」がまた一つの属人化ポイントになってしまう皮肉もあります。

言語の問題が解決しない。先述の通り、日本語で書けばタイ人スタッフは読めず、タイ語で書いても駐在員が中身を確認できません。日本語・タイ語の両方で整備するのが理想ですが、それだけの翻訳リソースを持っている中小零細企業は多くないでしょう。

「人がやる前提」を変えないと根本解決にならない。マニュアルは「人が正しく手順を実行すること」を前提としています。しかし、毎日繰り返す集計作業や転記作業でヒューマンエラーをゼロにするのは現実的に難しいものです。作業者が変わるたびに精度にバラつきが出ることもあります。

マニュアル整備そのものを否定するわけではありません。ただ、タイの中小工場の現実を考えると、「人に依存しない仕組み」を先に作るほうが、属人化の根本的な解消に近づけるケースもあるのではないでしょうか。

属人化を解消する「業務自動化」というアプローチ

業務自動化とは、人が手作業で行っている繰り返し業務を、ツールや仕組みに置き換えることです。「人がやる」から「仕組みが動く」に変えることで、担当者が誰であっても——極端に言えば担当者がいなくても——同じ結果が出る状態を作れます。

ここで言う自動化は、製造ラインのロボット化のような大がかりなものではありません。バックオフィスの「地味だけど毎日ある作業」を仕組み化するイメージです。

具体的に、どんな業務が自動化と相性が良いのかを整理してみます。

業務 よくある属人化パターン 自動化するとどうなるか
日次レポートの集計 Excelの関数や集計手順を知っている人だけが対応。その人が休むとレポートが出ない データを自動で集計し、決まったフォーマットで毎日同じ時間に出力される
日本本社への報告メール 駐在員が毎回Excelを整形して、日本語に直してメール送信。担当者の文章力に依存 集計データをもとに定型メールを自動で作成。送信前に確認だけすればOK
受発注データの転記 メール・FAX・LINEで届く注文を手動でExcelに入力。入力ミスが起きやすい 受信データを自動でスプレッドシートに反映。入力漏れや転記ミスが減る
在庫数の確認・アラート 特定のスタッフが目視でチェック。チェック忘れで欠品が発覚することも 在庫が設定した閾値を下回ったら自動で関係者にアラートが届く
社内文書の日タイ翻訳 バイリンガルスタッフ1人に翻訳が集中。退職すると対応できなくなる AIで下訳を自動生成。最終チェックだけ人が行う形にすれば、特定の人に依存しない

共通しているのは、いずれも「判断」よりも「処理」が中心の業務だということです。こうした業務は、自動化してしまえば人が変わっても関係なく回り続けます。つまり、属人化の余地そのものがなくなります。

当社では、API連携ツール「n8n」とAIを組み合わせて、こうしたバックオフィス業務の自動化を日常的に運用しています。プログラミングの専門知識がなくても、業務フローに合わせた仕組みを構築できるのが特徴です。

Excelレポートの自動化について、具体例はこちらで紹介しています

自動化で属人化を解消した実例と現場の声

実際に当社が自動化を導入した先では、以下のような業務を仕組み化しています。

導入先で自動化した業務の例

  • SNSインサイトデータの自動集計とレポート作成
  • 問い合わせデータの自動まとめ・集約
  • 短縮URL(Bitly等)のアクセスデータ自動集計と定期レポート送信

これらの業務は、以前は特定の担当者が手作業で対応していました。データを集めて、Excelに貼り付けて、グラフを作って、メールで送る——毎回同じ手順の繰り返しです。担当者が不在の日はレポートが出ない、あるいは別の人が慣れない手つきで対応してミスが起きる、というパターンが起きていました。

自動化後は、決まったタイミングでデータが自動的に集まり、整形されたレポートが関係者に届くようになっています。担当者が休んでも、出張中でも、仕組みは変わらず動き続けます。

導入先からは「人がいない分、こういう仕組みがあると本当に助かる」という声をいただいています。

当社自身も、社内のデータまとめやレポート作成に自動化の仕組みを使っています。実感として特に大きいのは以下の3つです。

0

やり忘れ
0

に依存

毎日・毎週の定型業務を自動化すると、「今日あれやったっけ?」という確認作業自体がなくなります。人に依存しない分、ストレスも減ります。

📌 正直にお伝えすると

自動化は万能ではありません。たまにエラーで処理が止まることもあります。APIの仕様変更や、データのフォーマットが変わったタイミングで止まるケースが典型的です。そのため、導入後の保守・モニタリングは必須です。「作って終わり」ではなく、「動き続ける仕組み」として維持管理する前提で導入することをおすすめします。

属人化解消の第一歩|まず「棚卸し」から始める

「自動化が良さそうなのは分かったけど、何から手をつければいい?」——そう思った方は、まず業務の棚卸しから始めるのがおすすめです。

いきなり全業務を自動化する必要はありません。以下の3ステップで、小さく始めるのが現実的です。

1

「○○さんしかできない業務」をリストアップする

まずは現状の把握です。「この人が休んだら止まる業務」「引き継ぎのたびに混乱が起きる業務」を書き出してみてください。日次レポート、メール対応、データ入力、在庫チェックなど、バックオフィス業務を中心に洗い出すのがポイントです。完璧に出す必要はありません。思いつくものを付箋やメモに書き出すだけで十分です。

2

リストの中から「繰り返し作業」を見つける

書き出した業務の中から、毎日・毎週・毎月やっている定型業務をピックアップします。自動化の候補になるのは、判断や交渉を伴わない「処理系」の業務です。具体的には、データの転記、集計、フォーマット変換、通知メールの送信などが当てはまります。逆に、取引先との交渉や品質判断のように、状況に応じた判断が必要な業務は、自動化には向きません。

3

1つだけ選んで、小さく自動化してみる

全部を一気にやろうとすると失敗しやすくなります。まずは「一番手間がかかっている繰り返し業務」を1つだけ選んで、自動化してみてください。効果が実感できたら、次の業務に広げていくのが無理のない進め方です。最初の1つがうまくいくと、「次はこれもできないか」と社内から声が上がることも多いです。

当社の経験上、最初に自動化する業務としておすすめなのは「日次レポートの集計」です。毎日発生する・手順が決まっている・効果が目に見えやすいという3つの条件が揃っているため、自動化の効果を社内で実感してもらいやすいです。

費用面については、業務内容にもよりますが、小さな自動化であれば月額1〜2万バーツ程度から始められるケースもあります。大規模なRPAツールの導入(初期費用だけで数十万〜数百万バーツかかることも)と比べると、試しやすい価格帯です。

UiPath(RPA)と当社が使うn8nの違いについてはこちら

よくある質問

Q. 自動化を導入するにはITの知識が必要ですか?

御社側にIT担当者がいなくても導入は可能です。当社が業務のヒアリングから仕組みの構築、導入後の保守まで一括で対応します。「自分たちで設定する」必要はありません。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

業務の内容や範囲によりますが、月額1〜2万バーツ程度からスタートできるケースもあります。まずはご相談いただければ、御社の業務内容に合わせた費用感をお伝えします。

Q. 導入までにどのくらい時間がかかりますか?

シンプルな業務(例:日次レポートの集計自動化)であれば、ヒアリングから稼働まで2〜3週間程度が目安です。業務の複雑さや関連するシステムの数によって変わりますので、まずは現状をお聞かせください。

Q. 自動化したあとに業務内容が変わったらどうなりますか?

業務フローが変わった場合は、仕組みの修正が必要になることがあります。当社では導入後の保守も対応しているため、「レポートの項目が増えた」「送信先が変わった」といった変更にも対応可能です。

Q. 今使っているExcelやメールはそのまま使えますか?

はい。当社の自動化は、御社が今使っているExcelやメール、スプレッドシートといった既存のツールをそのまま活用する形で構築します。新しいシステムに全面移行する必要はありません。

まとめ

この記事のポイント

  • タイの日系工場は、駐在員の交代・タイ人スタッフの入れ替わり・言語の壁という構造的な理由で、バックオフィスの属人化が加速しやすい
  • マニュアル整備だけでは限界がある。「人に依存しない仕組み」=業務自動化が有効な選択肢になる
  • まずは「○○さんしかできない業務」の棚卸しから始めて、1つだけ小さく自動化するのが現実的な第一歩

タイ日系製造業の業務自動化について、全体像はこちらの完全ガイドで解説しています

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